2013年7月のお悔み欄 福島と浜松の比較考察

hitsuji44‏@hitsuji44
お客様のお嫁さん(53歳)が他界され、新聞のお悔やみ欄を覗いてみるも、その年齢の低さに驚かされる。24歳、34歳、37歳、41歳、44歳、46歳、53歳、58歳・・・。心からご冥福をお祈りします。 pic.twitter.com/eRAnIijCvH



 福島在住のhitsuji44さんの、現地報告のツイートには、放射性物質の危険を、積極的に知ろうとしている私からみても、驚くようなことがあるが、今回のツイートも特にそうだった。新聞のお悔み欄の年齢という地味で静かな情報から、福島県で起きていることが、すでに、初期の体調不良の増加のフェーズを越えて、その結果が死亡年齢の低下として明らかになっているのだと感じた。添付画像をみると、確かに、20代〜40代の死亡者が軒並みならんでいて、特に、原発避難区域30Km圏に直接隣接しているいわき地区に、若年帯の死亡者が目立っている。
 手近にあった本日付の中日新聞静岡県西部のお悔み欄を確認してみると、その差に愕然とした。この愕然感を、ちょっとした科学的な判断にまで高めるべく、高校数学でやるような統計検定をやってみた。


【元データ】
福島県お悔み欄 年齢分布
  
   若年死           壮年死       老年死
県北             (63 65 67) 
郡山(24)          (63)       (71 83 82 86 90)
会津(46)          (65)       (84 88 89 99)
いわき(37 41 44 44)   (58)      (80 93)



静岡県西部お悔み欄 年齢分布

     若年死  壮年死    老年死
浜松市       (69)   (70 73 78 81 84 86 86 87 91 92)
湖西市       (69)
磐田市、森町          (78 81 82 83)
掛川市              (82)



 単に、若年、壮年、老年に分けて並べただけでも、福島において、若年、壮年死が、顕著にめだっていることがわかる。このお悔み欄にのせるかどうかは、葬儀会社が家族に確認をして、家族の希望があった場合に載るらしい。他に、新聞社に連絡すれば、載せてくれるようであるが、静岡西部では、中日新聞静岡新聞を比較したが、まったく同一だった。また、福島に比べ、静岡西部で、より、このお悔み欄に載せたがらない人が多いということは、同じような大都市部ではない地域柄から、考えにくいのではないかとは思う。
 また、人口は、福島県199万に対して、静岡県西部133万で、比較する集団としては、ひどくかけ離れた数字ではない。2013年度の男女平均寿命を平均してみると、福島県82歳、静岡県83歳と、ほぼ同程度である。そこで、このお悔み欄の死亡年齢の統計値を、エクセルを利用して確認してみる。


福島県  標本数 23
     平均 67.9   
     標準偏差 20.8

     
静岡県西部 標本数 17
      平均 80.7
      標準偏差 7.1


 ここで、明らかに、福島県の方が、平均寿命と比較して、この日の平均死亡年齢が低い(-14歳)ことがわかる。静岡西部は-2歳にとどまっている。さらに簡単な統計分析をすすめると、


分散の差の検定(F検定) 6.7E-5=0.000067 で、両群の分散が異なるといえる
異分散のt検定 t=0.005<<0.01


 つまり、この日の福島県静岡県西部の平均死亡年齢が、同じ日本で特に変わることがないといえる確率は、わずか、0.5%であるということである。200個の中に一つの当たりくじがあり、これを毎回引き当てることのできる者だけが、この平均死亡年齢の分布の差がないと言い切る権利があるが、そういう人はいないから(文明国であり科学技術立国である、わが日本の最高裁事務総局、東京第五検察審査会の中の人は別にしてだが)、この差は統計的にかなり有意である。ふつうは、5%を有意水準とするので、それから考えても、かなりの差がある。この日だけ、ここまでの差がたまたまあったのだというのも、かなり無理な説明になるぐらいの差だろう。
 そこで、何がこの有意な差をおこしているのかという問いになるが、バンダジェフスキーやヤブロコフの研究を認めるならば、答えは一つで簡単である。チェルノブイリで確認されたのと同じ、セシウム137をはじめとした長寿命放射性物質の拡散である。人種的、環境的な同一性が強い日本において、これだけの集団的な健康への影響を、局地的にもたらす要因を、他に考えられるだろうか。特に、ヤブロコフは、ひたすら公になっている統計数値を利用して、チェルノブイリ原発事故の長期的な出生率低下、死亡率上昇などの有意なトレンドを数々導き出しているが、これと同じことが、当たり前だが、すでに福島でも起こってきているということの証左だと思う。さらに、それによる人体におこる病理的変化は、現在来日して、奮闘講演中のバンダジェフスキーが、大まかな見取り図を提出している。心筋へのセシウム沈着による不整脈と突然死の誘発、免疫機能の低下、肝臓や腎臓の変性など、甲状腺癌に限らない、全身に及ぶ非癌病変を起こすことを多数の剖検から、動物実験も行いながら証明した。
 
 ツイッターをみていると、本日は、ドイツ文学者の池田香代子氏が、「山本太郎をデマッターと呼んだ」と、太郎支持派から炎上レベルの攻撃にあっているようであった。彼女のデマッターの元ツイートまでたどる暇はないが、彼女の書いた新聞の中には、「極め付きは、放射線の影響が、より深刻だとされていた子供の方が、むしろ、被曝をはねかえす力をもっていることを示す知見です。」と実際に書いてあり、その具体例として、セシウムを排出する能力が高い、遺伝子修復能力も高いという内容が続く。記事全体の内容は、避難派を非難するというものではなく、「その当時の不安な状況だったら、やむを得ない判断でした。今の科学的な調査は、そんなに心配ないとされていますが、あなたたちのその判断を支持します」というような内容である。


山本太郎氏をデマッターと呼ぶ池田香代子さんへの反響
http://togetter.com/li/535118


  ここで思うのは、放射性物質の危険をどう認知しているか、これが、かなり感度の高い、知識人たち(他に、評論家、政治家、科学者、コメンテーター)の踏絵になっているのではないかということである。というのは、医学的、科学的研究が、現実に、弾圧されているということまで受け入れる覚悟がないと、バンダジェフスキー、ヤブロコフをはじめ、日本の活動家ともいえる、木下黄太、山本太郎系列は、受け入れることはできない。私も、最初はこの事実を認識したときは、さすがに驚いたのだが、さらにそれを受け入れ、行動するのは、かなりの壁がある。原発事故を受けて、おのれの信念を通したあげく、結果、芸能界から排除された山本太郎が今、「大本営は嘘だ、王様は裸だ」と、政治家候補として必死に連呼している。これに対し、文壇でず太い生命を保つ池田香代子は、「大本営がいうから大丈夫よ。王様も立派な服をきているじゃない。」と新聞で書く欄をしっかり与えられている。彼女はグリム童話とか訳しているから、この辺のからくりにはまり込んでいるかもしれないことを、いち早く自覚してもよさそうだが、あまりそのようには見えない。
  私は、こういう時代状況をみながら、放射性物質の危険性を認知し行動できるかどうかは、戦時中の大本営の嘘を認知し、行動できるかどうかと、まったく同じぐらいの、構造と、歴史的重要性を持っていると思う。いや、これは世界的な大本営である。(年余にわたる、毎日毎日続く、WHO前の、IAEAと合意なければ放射性物質についての医学研究は進めないという協定に対するデモをみよ)


IndependentWHO – 原子力と健康への影響
http://independentwho.org/jp/%E3%83%92%E3%83%9D%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%86%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%A6%8B%E5%BC%B5%E7%95%AA-2/


原発被害に沈黙するWHO:IAEAの同意なしに発言できず」ル・モンド紙(2011年3月19日)
2011年4月 1日 (金) フランスの猫ブログより
http://franceneko.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/whoiaea319-5f9b.html


だから、戦前の大本営を否定するよりも、難しいかもしれない。しかし、当の日本は、原爆被害国で、さらに、海外報道をみると、チェルノブイリの4倍の放射性物質を拡散させた原発事故を起こした国である。


Fukushima nuclear cesium fallout equals 4,023 Hiroshima bombs
http://www.examiner.com/article/fukushima-cesium-equals-4-023-hiroshima-bombs
これは、核武装にこだわり、危険を唱える福島県知事を抹殺までしてきた自民党政治-官僚-特捜検察-東電による、3発目の原爆投下オウンゴールである。いや、3発目ではなく、4023発、今回の事故で自国に落としたことになる。抗弁する余地はない。本来なら、国会事故調の調査を参考にして、責任者を告発し、「福島第一原発事故裁判」を開くべきであると思う。


  日本には、この点で、人類史的な、なんらかの使命、ミッションがあると思いたいし、思うべきだと思う。自民党路線とは、つまり、これまでの日本支配層の路線とは、まったく逆行する路線であり、原爆と原発の非人道性を証明し、その廃止を行い、また、人類の未来のために、さらに国際政治的な活動へすすめてゆくという使命である。日本という国の独自性は、新しい国是は、明治以来の富国強兵路線ではなく、むしろ、ここに新たに置くべきだと思う。また、それは、以前、ブログでも触れたが、(2013-05-20 「日の丸」象徴をレイシズム尊皇攘夷的興奮から救出できるか?http://d.hatena.ne.jp/sarabande/20130520日本の国旗の象徴を、原子力と科学技術信仰による、本来の自然なき偽太陽神崇拝と、ガラパゴス化した誇大妄想的な尊王攘夷の日の丸から、太陽を源にする本来の自然エネルギーへの賛意、敬意を表し、それを中心として共生循環社会を築く日の丸に、生まれ変わらせることでもある。



参考リンク
1. 武田邦彦 マスコミが伝えない事実と解説 7月18日
原発事故後の日本の人口とチェルノブイリ事故後のウクライナの人口
http://takedanet.com/2013/07/post_4558.html


2. 福島県いわき市の元教員の証言動画
 「昨年いわき市の小学校で身長が1センチも伸びていない子が多い。異常」
http://www.asyura2.com/13/genpatu32/msg/635.html
 他、鼻血が震災後はタラーではなくドーッと出ようになった等「カミングアウト」があり。教職員間では、放射能との関連付け発言はタブーだと証言。
 この動画の講師の小児科医も、統計的な調査をするべきと述べている。福島の医師がやるのが一番だが、調査自体を統制するような圧力があるとも話している。「radiophobia」「放射脳」退治には、福島と九州での、児童の身長の伸び、鼻出血や感染症の頻度などを比較検討すれば、事足りる。簡単なことであるが、これをしない。




P.S. 7月24日記
 この結果が、本当に継続的におきていることなのかどうか確認するためにも、先に阿修羅掲示板に上がっていた、5月10日から31日までの福島お悔み欄年代別データを、静岡県西部の同じ時期のものと比較してみた。ただ、この形の比較だと、統計的な有意差がでるほどの差がみつからなかった。


元データ阿修羅記事
http://www.asyura2.com/13/genpatu32/msg/106.html


 では、この7月の一日は、偶然、福島での低年齢死去者が増えていたからなのか、それとも、今後のトレンドを先取りしはじめている徴なのか。あるいは、hitsuji44さんキャプチャー部分のバイアスを反映したものなのか、まあ、いろんな要因は考えられる。ただ、一日に40代以下が6人あったというのは、福島5月10日〜31日にもないし、静岡新聞でもそんな日はない。無視はできないことが、起きつつある徴ではないかと考えておいた方がいいのではないかと思う。そして、福島県民の方は、おかしいなと思うようなことが続くようであれば、是非、1か月分ぐらいのお悔み欄年齢を、原発事故前、2010年の同じ月一か月と比較して、簡単な統計的な検定をしてみると、見えること、言えることがあると思う。