韓国人徴用工の方々への賠償問題について

「徴用工」「女子勤労挺身隊」訴訟に対する韓国最高裁判決に寄せて 弁護士 岩月浩二氏による特別寄稿! 2018.12.29 7.13加筆
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/438559


【日刊IWJより】日本は1965年の日韓請求権協定で、この問題に関しては解決済みであると主張していますが、1991年、外務省条約局長は「日韓両国の外交保護権(相手国の責任を追及する権利)を相互に放棄したが、個人の請求権は消滅していない」と答弁しました。
日本政府も昨年11月、初鹿議員(立民)の質問主意書に対し「91年答弁を含めて政府の見解は一貫したものだ」と回答、個人の請求権は消滅していないことを認めている。問題は、なぜ、安倍政権になってから日本政府のこれまでの一貫した外交姿勢をひっくり返し、事を荒立だてているのか、ということ。


【岩月寄稿文より引用】
 現在の情勢を踏まえ、確認しておきたいのは、本件は民間企業の被害者個人に対する賠償問題であり、政府は直接の当事者ではないことである。日本製鉄は、賠償を命じた2013年のソウル高裁判決を受けて、判決が確定すれば、これに従うという方針を有していた。にも拘わらず、日本政府が介入して、判決が確定しても支払わないようにさせ、事態を紛糾させた。問題を困難にさせているのは、当事者である民間企業ではなく、もっぱら日本政府である。韓国非難一色のメディア状況だからこそ、もう一度、基礎的な事情の正確な理解が欠かせないと考える。

請求権協定締結直後の国会において、条約締結を担当した椎名悦三郎外務大臣は、次の通り答弁して、請求権と経済協力は無関係であることを力説した。いわゆる「独立祝い金」答弁である。
「請求権が経済協力という形に変わったというような考え方を持ち、したがって、 経済協力というのは純然たる経済協力でなくて、 これは賠償の意味を持っておるものだというように解釈する人があるのでありますが、法律上は、何らこの間に関係はございません。あくまで有償・無償5億ドルのこの経済協力は、経済協力でありまして、韓国の経済が繁栄するように、そういう気持ちを持って、また、新しい国の出発を祝うという点において、 この経済協力を認めたのでございます」(参議院本会議1965年11月19日)

 

【徴用工問題に関する日韓の交渉経緯】

戦時徴用訴訟 和解を拒否 政府、韓国側に伝達 - 産経ニュース https://www.sankei.com/politics/news/131230/plt1312300007-n1.html
ここで、深く事情を勘案し、今後のアジアでの日本の立ち位置を考え、和解の枠組みを作っておけば、流れは変わっていたと思う。

 

河野太郎氏の立論
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/10474.html
昨年11月3日街頭演説「1965年の国交正常化でいちばん問題になったのが補償や賠償をどうするかで、日本が経済協力として一括して韓国政府に支払い、国民一人一人の補償は韓国政府が責任を持つと取り決めた」と経緯を説明。


ところが、この一大重要事項が、請求権協定では、文書化はされていない。また、協定締結当時の解釈とも異なっている。岩月氏は、「となると、河野外相によれば、この「取り決め」について、書面化することなく、「韓国政府が責任を持つ」とする、口約束をしたというのである」

【筆者コメント】ここが、日本側の立論のアキレス腱になろう。日本国民に対しては、原発事故後の鼻血もストレスと強弁して忘れさられるのを待ったり、公文書も偽造してもうやむやにもできるかもしれないが、外国民となると、それもなかなか難しかろう。バカにしたり、威嚇したり、経済制裁は加えられるかもしれないが
 2013年の韓国側の和解の打診のときに、しっかり本腰をいれて、対応すべきであった。それができるためには、村山談話河野談話を、日本が真摯に受け止めつづけ、未来志向の外交として態度で示してゆく度量が必要であった。2012年からの安倍政権は、本質的な所で逆回転をしはじめていた。