福島における動植物変異 チェルノブイリとの比較

7月29日 ティモシー・ムソー講演会 「福島における動植物の変異とチェルノブイリとの比較」
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/93615
ムソー教授のつぶやき「日本人協力者は私たちの論文に名前が載ることを嫌う」


■講師 ティモシー・ムソー氏(サウスカロライナ大学教授)
■コメンテーター 岡山博医師(仙台赤十字病院呼吸器科、東北大学臨床教授)、吉澤正巳氏(浪江町「希望の牧場」代表)
■主催 7・29実行委員会、春を呼ぶフォーラム
■詳細
 http://kokucheese.com/event/index/100689/




 10月31日、山本太郎天皇陛下に、園遊会の場において、子供の被曝によると思われる障害が福島県のみならず、広くひろがりつつあり、今後懸念されること、原発事故作業員の健康管理があまりにずさんなこと、などをしたためた書状を手渡したとして、ひと騒ぎになった。直訴うんぬんとは別に、彼の問題意識自体はごくまっとうなものであると思うし、彼は内部被曝による障害について、決して妄想でわめきたてているのではなく、しっかり勉強している。ここにあげたティモシー・ムソーの議員会館における講演会には、参議院選挙に当選したての山本太郎が、来賓ではなく、一聴衆として、お金を支払って来聴している姿がある。
 バンダジェフスキーの人体への影響の研究のみならず、生態系全体に対してどのような影響を、本格的な原発事故による長寿命放射性物質の大量漏えいがもたらすのか、確認しておきたいとおもっていて、ティモシー・ムソーの講演動画はいつかみようと思っていたのだが、山本事件があり、彼のやむにやまれぬ行動にいたった、その認識をたどってみるというためにも、11月2日、3日にかけて、この講演会全体を視聴した。
 人体や生態系への影響は、放射性セシウム、放射性ストロンチウムなどの、物理的な性質のみから演繹的に推測することができる範囲と、できない範囲がある。つまり、線形的な現象の範囲と、細胞内での遺伝子変異、タンパク変異、あるいは循環系から内分泌系などの、有機体を成り立たせているシステムと物理学的な特質との相互作用がどのようにでるのかという、線形的な影響のみでは説明できない現象をもたらす範囲(非線形複雑系といってもいいであろう)がある。結局、最終的なアウトプットは、福島の生態系、場合によっては、風や水循環、天候などの環境要因も含めたによって決定され、事故の影響を調べるには、現象を観察記録することが、現実的なアプローチとなる。ティモシー教授の結論は、チェルノブイリと、ほぼ同じことが、確実に福島にて進行していることを確認するものであった。ツバメのホールボディーカウンターによる汚染ベクレルと、ツバメにみられる障害の程度との間に関連があり、日本のツバメの方がどうも感受性が2倍高いという結果もあった。以下、ツイートでのメモをまとめておく。ティモシー講演の後の、岡山、吉澤両氏の発言も、貴重な情報であった。
 
注)( )内の記事は、私の独白感想です。



1.ティモシー ムソー講演
「ムソー氏はIAEAが2006年に出した「チェルノブイリ報告書」が自身をチェルノブイリへと向かわせる要因のひとつになっていると表明。その報告書の一部について「多くの動植物の個体群は拡大し、現在の環境条件はチェルノブイリ強制避難区域内の生物相に良い影響を与えている、と書かれていた」


人間の疾病は主としてストレスの結果ということも言っている、と紹介。その上で氏は「このIAEAの主張を裏づける科学的データは当時まったく存在していなかった」と報告書が捏造と強調。「当時のチェルノブイリに生息していた野生の馬は原発事故後に別の地域から運び込まれたものだった」と指摘


「福島でも調査を行っており、チェルノブイリの調査研究の成果に重なる部分がある」
対象生物の多くに、被曝レベルに正比例した1. 奇形・発育異常率の上昇、2. 生殖率の低下、3. 寿命の短縮、4. 個体群の規模縮小、5. 突然変位の世代間継承(可能性)などが認められると報告した。


チェルノブイリ調査(06〜09年)で得られた、線量と個体数の相関が福島調査(11年)にも当てはまった」と伝えた上で、次のように強調。「影響の度合いが、福島はチェルノブイリの2倍だった。福島では、2011年よりも2012年の方が、放射線の影響が強くなっていることもわかった」


「毎回、複数の日本人専門家が、現地で力を貸してくれる」と、日本側の協力姿勢を評価する一方で、「彼らは概して『研究論文に自分の名前は載せないでほしい』と言ってくる」と、不満がにじむ言葉も口にした」
(眼と耳を塞ぎたくなる現実だが、これをある問から厳密に測定し法則性を発見するのが科学)


IAEAがやったのか知らないが、ほかの地域から野生の馬をもってきて、その地域の研究対象だと言い張るのは、悪質な政治であって、科学ではない。
(早野論文の測定機器の選定についても、疑問を呈する専門家がいる。下の注)の引用参照)


「この日ムソー氏は、川田龍平氏、山本太郎氏の挨拶に続いて登壇。2000年から、チェルノブイリの生物の調査研究を続けている自分たちのグループについて「私たちはどの組織にも属さない生物学者の集団。反原発の活動家の集まりではない」と強調」
(太郎非難の前に、まずこれを国会上映したらどうだ)


ティモシーの講演は1時間弱だが、十分聴く価値はある。生物学者で、その地域の鳥類、昆虫について網羅的に調査し、外部放射線量、ツバメではWBC測定結果がどう影響しているか調べている。


IAEA報告は2006年報告は「多くの動植物の個体群は拡大し、現在の環境条件はチェルノブイリ強制避難区域内の生物相に良い影響を与えている、と書かれていた」となっていたが、彼の研究結果はまったく逆だ。
(まさに、天動説と地動説程の差がある。IAEAを信じる者は天動説を信じる者である)



チェルノブイリ高汚染度地域の生物種は半分ほどになり、個体数にいたっては、約3分の1になっている。ゴジラのような大きな奇形はないが、小さい外見の奇形、腫瘍、精子の奇形、減少、小脳症などが起き、結果的に個体数が減ってゆくき、その地域で絶滅する種もでる。


毛虫が葉っぱにくっついて死んでいるような場所では、多くの種が絶滅しているサインであるとのスライドには、恐怖感を覚えた。
(厳密な方法でしらべてゆくと、汚染地はそのようなことになっていることがわかるのだろう。だからこそ、ティモシーの日本での研究には資金はつかずゼロ円で2年やっている状態)



福島でも、チェルノブイリと同じ現象が、すでに起きていて、40種程度の、チェルノブイリと同じ種の鳥類の変化は、2倍だという。
(日本の鳥類の感受性が2倍と解釈していたが、チェルノとは核種が違い、同線量でも有害性が2倍ともいえまいか。いずれにせよ、いいことではない)



(これで「人には健康被害は、将来にわたっても起きない」というのは、いかに非科学的なのかがわかる。あるいは、安倍の言う「人」は、生物としての人ではなく神の子なのか。
つまり天動説なのである。ただ、ヤマトシジミもそうだが、この分野の本物の研究には公的な金がつかない。あまり科学が発達すると、「神の子」の立場がなくなるからだと思う)



2.追加講演

1)仙台赤十字呼吸器科、東北大臨床教授、岡本博先生

食品衛生法第6条 有毒な疑いがある食品は、販売、製造してはならない。
ただし、厚労大臣が安全だと定める場合はこの限りではない。
(政治家が食べてアピールはこの例外規定を示すためか)


薄めて流通する汚染食品の全体量を増やすと癌と遺伝病が増える
放射能の、強度によらない確率的作用による
(政治家が食べておいしそうにしているのをまねると、結果的には、一つは、これをもたらすことになりそうだ)

福島県では、本年4月から、給食が地産地消。給食は義務教育の一貫であり、避けることはできない。


被曝を減らすために まとめ
詳しい知識がなくても放射能は毒物と考えれば自分で判断できる
他人に頼らず、だまされず、誇りと熱意をもって「自分」で判断して、言動する
自由に安全に発言や議論ができる
 まともな社会、まともな人間関係を作る
人や社会を偽る人と、偽る社会を止めさせる


(呼吸器内科医に、真剣にこんなことを説教されるような、そういう限界状況にあるんだろう。まさしく、「上医は国を医す」だ。だが、 それも、マスコミ、オリンピックでかすめられる。その間に、癌と遺伝病が増えてゆくのだろう)




2)希望の牧場、吉澤氏。
10件の浪江農家が被曝牛700頭まだ飼っている。原発14Km地点白斑などこれまでみたことがない症状がある。農水省畜産局の係りのものは、その牛は、見なかったことにして素通りする。


「研究してくれと農水省に言うが、それは文科省だ、文科省にいうと、牛は農水省だと押し付け合いになる。国は殺処分しろというが、この牛は原発事故に対して生きながら抵抗する者として、自分も14Km地点に住んで飼い続けている。国が責任持って研究してほしい。」
(覚悟もって大事なことを言ってる)



3.質疑応答  岡山博臨床教授が吠える
ティモシー教授は、放射能による植物の奇形には、今の所、懐疑的な見解を質疑応答で述べている。だが、鳥の奇形は、観察されるよりも、高頻度で起きているだろうと。


(IWJ 7.29ティモシー・ムソー講演録画の、2時間40分56秒からの岡山医師の「物言えぬ日本社会」への警鐘は必聴だ。黒川清原発事故を人災と結論付けたが、その延長でもある。このくらい人生経験と貫禄と人間性のある医師から説教されると、身に染みて非常にいい)


その原発事故をもたらした「人災」としての物言えぬ社会が、原発事故後に改められたかといわれれば、むしろ強まっている。福島の教育現場での、給食強要、検査しようとすると窃盗扱いなど、具体的に語られている。かなりひどい。人災をもたらし社会をつくっていた当人、政党がトップになっている。


IWJ同録画、3時間2分より。岡山、東北大臨床教授が吠える。
福島県医大放射性物質で高濃度汚染された野生動物を解剖調査しようというグループが数個でていたが「それは国がやることだ」という学長命令で中止になった。結局どこもやるところがないままになっている。学問の自由が侵されている


(高濃度放射性物質で汚染された哺乳類の解剖調査というのは、福島医大学長判断では「国」の研究の管轄とされているが、希望の牧場の吉澤氏が、国に持って行って研究してくれと言っても、農水省文科省も「自分ではない」と押し付けあう現状。この分野の研究は、公には実質禁止されていることがわかった
 科学的な知見を得ようとしても内部被曝による臓器変化の研究が、日本では禁止されているのだ。今、流行の、憲法違反の「特定秘密」化されている。バンダジェフスキーはこれをヒトでやったが同じ立場の福島県医大の病理学者は、あるいは法医学者は、どう判断するか?解剖する機会はあるはずである。
 3時間見通したが、最後までみる価値はあった。こういう理解、パースペクティブを提供してくれるIWJには感謝したい。資金難で正会員募集中である)




注)この分野での科学的発展を目指すなら、本来、こういう質問に応じて、どんどん追加研究がなされてゆくべきだ。早野先生の次の研究の発展が待たれる。

”医療ガバナンス学会MRIC”に投稿するも、即刻不受理となった『「早野氏論文」への公開質問状』
木村 知、 田口茂、 竹野内真理、松井英介、 矢ケ崎克馬肥田舜太郎
http://blog.livedoor.jp/medicalsolutions/archives/51984809.html