『赤とんぼ』の原詩、探訪
赤とんぼの詩を調べると、「おわれてみたのはいつの日か」が、「追われて」ではなくて「負われて」となっている。誤字ではない。その心を調べてみると、そもそも、原詩は今の歌われている詩とは異なっていた。姉やも姉さんではなく、子守娘、だった。
童謡「赤とんぼ」について
吉海 直人(同志社女子大学 日本語日本文学科 教授) https://www.dwc.doshisha.ac.jp/research/faculty_column/2018-10-09-11-19
赤蜻蛉(原詩) 三木露風
夕焼、小焼の、山の空、負はれて見たのは、まぼろしか。
山の畑の、桑の実を、小籠に摘んだは、いつの日か。
十五で、ねえやは嫁に行き、お里のたよりも絶えはてた。
夕やけ、こやけの、赤とんぼ、とまつてゐるよ、竿の先。
三木露風の、幼少時代の回想からなる詩、ということのようだ。これで、この曲の味わいが一段と深まる。三木がトラピスト修道院で働いていた大正10年、作詞され、山田耕作が昭和2年に曲をつけた。三木の故郷は、兵庫県揖西郡龍野町、とのことである。こういったことをイメージしながら、ギターでこの曲をつま弾くと、三木の郷愁と山田の抒情が、今間近に蘇る。音楽と詩の、歌というものの、不思議さでもある。