追悼 チャベス氏 

 昨日(平成25年3月8日)の22時からのTBSラジオdigで、朝日新聞の元中南米特派員(伊藤千尋)が、チャベスのことを、一定の評価しながらも「寅さんみたい」「お笑いタレントのようなことをしていた」と述べていたが、実像をはずして戯画化したコメントだったと思う。彼は、修士課程だが大学院を出た知識人でもあり、かつ、並外れた胆力をもった革命家、政治家であった。民衆向けの顔と、政治家としての顔とが、裏表分裂せずに、しっかりとつながっていたのだと思う。立ち位置としては、日本の政治家では、やはり小沢一郎が一番近いのではないか。吉田茂安倍晋三とは月とすっぽんである。
 デモクラシーナウのインタビューをみると、その一端が垣間見れる。現代社会で、こういう「漢」を見ることは、なかなかできないことである。それだけに、彼の死が悼まれる。



2009年 コペンハーゲンでの国連気候変動会議に出席したチャベス大統領へのエイミー・グットマンインタビュー
http://democracynow.jp/video/20121221-3
「米国のあなたを気の毒に思います。あなたの政府は国民をないがしろにして 世界を支配することばかり考えている。」


エイミー・グットマン
ベネズエラチャベス大統領は、国連の気候変動会議に出席した後 ボリビアと共同会見を開き、コペンハーゲン合意について 「各国首脳のメンツを保つための非民主的な合意」と批判し 「オバマ大統領にふさわしいのは『ノーベル戦争賞』だ」 「ブッシュ大統領と同じ地獄の匂いがする」と述べました。 記者会見を終えたチャベス大統領に聞きました。

グットマン(以下G):ベネズエラの石油の輸出先はカナダに次いで米国が第2位です。
ベネズエラ経済は石油の輸出に依存していますが、気候変動会議でのベネズエラの提案は?

チャベス(以下C):問題は石油そのものではなく、石油で何をするかです。
米国は世界一の石油消費国だ。資源の消費大国です。石油は重要な資源、ライフラインです。しかし私たちは次の時代に移行しなければならない。新エネルギーの開発について話し合うべきです。必要な科学的調査と投資を行い先進国がその責任を負うべきです。

G:どのレベルの排出削減まで、ベネズエラは受け入れる用意が?

C:100%削減です。私たちは排出をゼロにしなければいけません。
 ベネズエラの排出量は先進国に比べて少量です。我々は環境を破壊する排出ガスを
 すべて削減すると合意しました。それにはライフスタイル、経済体制を変えなければ いけない。社会主義に移行すべきです。

G:どのように、資本主義から脱するのですか?

C:キューバがしたようにすればいいのです。
 ベネズエラも同じやり方で 富裕層の特権を民衆に与えています。
 それには革命が必要です。

G:オバマ大統領の演説をどう思いましたか?

T:オバマ大統領には不満がつのります。国民の期待を裏切った
 大統領として歴史に残るでしょう。 私にとってではなく
 変化を期待してオバマ氏に投票した米国民にとってです。
 オバマ氏は最も過激なブッシュ政策を続けている。 帝国主義的政策です。

G:たとえば?

T:戦争です 米州首脳会議で、オバマ大統領に言いました ほんの数分でしたが
 彼に言いました  「コロンビアの問題で対立するのはやめよう」
 「分析チームを組んで共同で問題解決にあたろう」 反応ゼロでした。
 コロンビアで米軍基地を7つも建設しています。 それだけでなく
 イラクアフガニスタンでも戦争を続け、グアンタナモ基地の問題も
 大きな落胆で終わった。
 米国のあなたを気の毒に思います。あなたの政府は国民をないがしろにして
 世界を支配することばかり考えている。 米国はまず国内問題を、解決すべきです。
 貧困や不平等は日増しにひどくなり、人々は失業し 家を失いホームレスになってい 
 る。 社会保障を失い病気になる。まず自国民の面倒を見てから世界平和を考える
 べきです。

G:あなたは米国政府から、独裁者と呼ばれていますが?

T:大笑いだ。帝国に独裁者と呼ばれて、むしろ光栄です。
ドン・キホーテのエピソードをお教えします。
 ドン・キホーテと、従者サンチョが旅をしていて 犬に吠えられたサンチョが
「かみつかれる」と恐がると、ドン・キホーテはこう言った。
「あわてるな」「犬どもが吠えるのは我々の馬が跳ねているからだ」
帝国主義の米国から「民主的な大統領」と呼ばれたら、そっちの方が心配だ。
 真の民主主義に貢献する国を攻撃しているのは 帝国主義の国です。

G(スタジオにて):国連気候会議に出席した、チャベス大統領でした。  



P.S.
CNNのネット内記事で、
「米俳優のショーン・ペン氏は、『米国は、友とは意識していなかった友を失い、世界の貧困層はチャンピオンを失った。私は大切な友人を失った』とチャベス氏をしのんだ。」とあるのが印象的だ。チャベスは、放蕩息子アメリカにとっての、「友とは意識していなかった」友人であり、さらには、みじめな自分に比べると、殺してしまいたいような威厳をもちつづけた父性的存在でもあったともいえる。


葬列の写真 
http://libya360.wordpress.com/2013/03/06/historic-and-unprecedented-venezuelans-honor-hugo-chavez/
葬列の長さは、全部含めると8Kmに及ぶと書かれている。彼は、そのくらいのことをしてくれた男だ。