トランプ大統領のアクティングアウト

安田菜津紀 ‏@NatsukiYasuda · 1月17日
  イラクの友人との会話。
  「アメリカの大統領、トランプさんになるね」
   「そうだね。でも憎まない。だって僕は本当のムスリムだから」
  と彼は穏やかに答えた。
  「自分たちを誹謗中傷する人間でも、
   決して憎まず受け入れるのがイスラムの教えなんだ」
   なんだか自分が、恥ずかしくなった。


 イラク人からすれば、ブッシュJr.よりもトランプの方がずっとかわいいだろう。なにせ、一方は大層な自由を叫びながら、イラクに濡れ衣を着せ悪の枢軸呼ばわりをし、侵略、略奪、大量虐殺を行った。ジキルとハイドであるが、結果的にブッシュのアメリカがやったことは、そういうことだった。一方は、そんなことはもうしないというが、入国審査を90日でみなおさせてくれ。その間待ってほしいと。自国の安全を図る気持ちもわかるが、トランプのアメリカというか、米国自身が公式に謝罪するのがまず先ではなかろうかと思う。それは、ドイツがやって、欧州に受け入れられたようになのだが。
 私は、前からオバマにもツイートで謝罪をすすめていた。あの2003年の無茶苦茶の原点を忘却して、イスラム過激派だ、テロ対策だいっても、皮相な波風しかたちつづけないような気がしてならない。まず、イラクに謝罪してから、もうしません、で、申し訳ないが、すぐには過激派はなくならないだろうから、自国の安全のため、入国審査みなおさせてください、だろう。国際社会ではなく、一般社会での筋の通し方はそいうものだ。一般社会のように、イラク君と米国君の人権が尊重され、法が遵守されるならば、イラク戦争は、莫大な賠償金が発生する事件であろう。それを可能にするような「国際法」「国際裁判」という公法公罰が無力化しており、その代りに、テロとテロとの戦争いう報復合戦、私刑合戦が演じられるようになってしまった。確かに、2001年の9.11は米国にとって巨大な悲劇であったが、それだからといって、イラク戦争が正当化されてはならない。



2015-08-15 安倍談話よりも、8・31イラク戦後5年オバマ談話を世界は要している
http://d.hatena.ne.jp/sarabande/20150815


【1月31日 今日の赤旗】(本紙ワシントン電)難民の受け入れ停止やイスラム圏7カ国からの入国禁止を命じた大統領令をめぐり、首都ワシントンなど米各地で29日に抗議集会。差別・排外主義的な政治を許さない「米国の姿を示そう」との声が、大きなうねりに


  トランプ騒動をみるにつけ、大層な米国の理想とやらをいう前に、十字軍とかいって、イラク滅茶苦茶にしたの謝罪してほしいし、自国の安全を図るのも、そこからじゃないかなあと思う。もし本気でやるなら、同盟国の日本人としては、相応の付き合いをしていくつもりである。もし、アメリカが謝罪できない、罪を公にみとめられない、そうなると、どうなっていくのか。どこか滑稽なトランプ大統領のアクティングアウト的な政策と一連の騒動というは、その一つのシナリオをみているような気がする。ただ、彼はまだ謝罪をするまでにはいたっていないものの、「イラク戦争は米国にとって、最悪の決断だった」といいきる人間である。そのような人間が米国大統領になったということについては、私はかすかな希望を感じている。

 反TPPの姿勢も含め、彼の現状にたいするアクティングアウト的な政策実行が、どういう化学反応をもたらし、どこに国際社会を転変させていくのか。アメリカが、国民国家を重視する姿勢を対外的に出すということは、日本も同じ姿勢を出していく非常にいいチャンスなわけである。食料自給率や、安全性の法律について、相手を尊重するとともに、こちらも尊重されるような、隷米偽装保守的ではない意志表示をすればいいと思う。もし、本当に米国が、これまでのごとく、他の国を転覆させたり、隷属させたりせずに、異文化を尊重しながらの"Deal"をしてくれるようになる、というのならばだが、私は大歓迎だ。

 しかし、安倍の歴史認識の皮相さから帰結してくる、米国との和解という名の一体化が進むのではないかというシナリオがある。アメリカ・ファーストに、ジャパン・ファーストが、交渉軸として果たして立ちうるか、それとも、アメリカ・ファーストにひたすら隷属することになるのか。つまり、トランプのアクティングアウトに、振り回され操作されてしまうのか、冷静に自国と国際社会や世界がどうあるべきかの原理をもって、他国と連携しながら、前に進めるか。安倍がトランプとの初の首脳会談で「米国のインフラ開発にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の投資資金を活用する方向で調整」という一報が入ることからも、先はそんなに明るくはなさそうである。民主党政権が崩れてからの8年で喪失した、戦後日本の国家の独立性の基盤は大きいかもしれない。安倍の歴史認識の起点である、サンフランシスコ講和による日本独立ということの帰結が、実のところは、どうなるのかをみることになりそうである。



【参考記事。俯瞰的に考える基盤を与えてくれると思う】
「リメンバー・パール・ハーバー」と「アメリカ・ファースト」は戦後秩序を破壊する「日米合作」か――安倍総理真珠湾訪問と「戦後レジーム」の行方(神子島健 成城大学非常勤講師 学術博士) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/357288


 「すなわち、歴史問題を重視しているようでありながら、むしろ過去のうち現在の自分の立場にとって都合のいい部分のみをつまみ食い的に用いることで、実際のところ歴史の軽視、ないし無視でしかないということである。この歴史への向き合い方、否、向き合わない態度は、首相に限らず、マスメディアと日本社会のマジョリティの態度であると言えよう。そして、それはかつて敵として戦った日米が軍事同盟の「絆」で強くつながっている(対米従属の果てに在日米軍自衛隊が「直属」するまでに至ってしまった)、ということの正当化に結びついている」


「米国も、敗戦国の戦争犯罪人を裁いた戦争法規、主に今日言うところの国際人道法を、戦後の国際秩序の中で、具体的にはベトナム戦争イラク戦争などにおいて、あたかも米国(だけ)は縛らないかのように振舞い続けている、ということである」


真珠湾を日本が攻撃する前、すでにヨーロッパで起きていた戦争に巻き込まれることを嫌う米国内の孤立派(isolationist。米国内では伝統的にかなりの力を持っていた)、のスローガンこそが、「アメリカ・ファースト」、まさにトランプが言っているものと同じであった。(当時の米国内で参戦に反対していた組織が、America First Committee)ところが、そこで真珠湾に対して日本軍による奇襲攻撃を受け、「リメンバー・パール・ハーバー」に変わったのである。同組織は真珠湾への攻撃を受けて解散を決めた。
 この指摘をふまえて、想像力をはたらかせて考えてみよう。「アメリカ・ファースト」から「リメンバー・パール・ハーバー」に変わった米国が主導し、第二次大戦後の国連の体制の基盤を作った。今回安倍総理が「リメンバー・パール・ハーバー」の意味をひっくり返した後に、トランプのアメリカが「アメリカ・ファースト」に戻ろうというのだ。これは何を意味するのか?」