平成28年、2・26に寄す

加藤典洋氏「日本は陳腐化すると愛国と信仰になる。すこぶる予言的な本である」

中島岳志島薗進『愛国と信仰の構造』http://goo.gl/Z72ilS
紹介文 「国家神道、祖国礼拝、八紘一宇愛国心と信仰心が暴走をはじめ戦前の日本がなだれこんだ全体主義。その種がまかれた明治維新から第二次大戦まではおよそ七五年、戦後七五年が近づく現代日本



 この島薗、中島両先生の問いかける問いに対して、宗教的な道を探っている現代人としては、象徴天皇制=人間-天皇を、いかに死守できるかだろうと思っている。天皇の元首化も、人間天皇の非人間化への道であり、追っては、天皇の名のもとでの、国民の非人間化への道でもある。魑魅魍魎な政治、世界にあっても、我々の人間性を支えてくれている人間-天皇が日本に存在できる世が、長く続いて欲しいものだ。

 戦後の日本の積極的な到達点として、人間-天皇がある。人間-天皇と共に歩む日本人というイメージだ。現憲法の中心に、この象徴天皇制をみたい。そこから、立憲主義的な政体や、人権理念がでてくる。九条は小林節先生のいう形で変更が必要だろうと考えるが、天皇を再元首化したら、日本の歴史、昭和史の否定であろう。


 人間-天皇と、服従ではなく相互尊重の気持ちで、共に歩み、また、その歩みを専守防衛で、自分たちで守ってゆくこと。焼け野原に生じた日本の初心であり、戦後に獲得した日本の歴史的到達点だろう。経済とか三菱とか財閥とか、あるいは、アメリカとか中国とかソ連とか、そういうの以前の赤心だと思う。

 そこから、明治維新時から胎動していた日本における立憲民主主義政治と、さらに、基本的人権の尊重が自然にでてくる。日本の企業、経済活動も、この中で育まれたものである。この文脈で、日の丸を新たに国旗として象徴させ得るのではないか。君が代も再解釈できそうにも思わなくもない。そういう地点からいえば、ヘイトデモで、「日の丸」を振り回すのは、間違っているわけである。日本を取り戻すでもなんでもなく、貶め、喪失してしまっている。日の丸を象徴している立場の今生天皇は、あきらかに、心を痛めておるだろう。



【過去記事紹介】
2015-10-31 昭和天皇の『新日本建設に関する詔書』‐神権否定と国民への主権禅譲
http://d.hatena.ne.jp/sarabande/20151031

2015-06-25 「人間-天皇」と、日本人の人権天賦 国家神道の新約化
http://d.hatena.ne.jp/sarabande/20150625

2014-09-07 「人間天皇」とともに、新しい日本の歴史をつくろう
http://d.hatena.ne.jp/sarabande/20140907

2013-05-20 「日の丸」象徴をレイシズム尊皇攘夷的興奮から救出できるか?
http://d.hatena.ne.jp/sarabande/20130520