安保法制に関する思い

 6月19日から数日間の、現在進行中の安保法制議論に関するツイートがたまってきたので、ブログ記事として記録しておきたい。現在進行形の政治的イシューについて、ここまで思考をめぐらすというのは、2014年2月の都知事選以来だと思う。そのくらい、この、日本国憲法からは違憲と断定せざるをえないような、安保法案に賛成か、反対かというのは、それぞれの有権者の実存的な問題ともからむような、根深いところを揺さぶるものがある。ツイートという「雑感」レベルの記録だが、それを深めると「国への思い」というところまでにゆく類のものになる。
 私の発想はかなり自由だが、憲法を尊重するというのは、その字義ではなく、その起草の精神を尊重することと思っている。憲法の文面は、意味するもの、シニフィアンであるが、立憲起草の精神は、意味されるもの、シニフィエである。自民党側は、シニフィエのレベルからシニフィアンを破壊しようとしているが、抵抗側は、シニフィアンに籠城しているだけにみえる。護憲側のシニフィエの場所を示していかないといけない。


1.日本が主体的に参加する日米安保というのは、どうあるべきか


6月19日


第3次アーミテージ=ナイ報告書を読む 吉崎達彦
2012年09月09日
http://blogos.com/outline/46560/
リチャード・アーミテージ座長が、冒頭「日本は一流国家(Tier-One Nation)たるつもりがあるのか。そうでないのなら、この提言は閉じて、読む必要はない」


アーミテージ路線ではない、日本なりの「一流国家」のありかたを、日本国憲法ちゃぶ台返しした後で、突きつけることができるだろうか。別に、没落帝国のアーミテージに評価されないでも、日本が、これからアメリカが世界で生き残る道を示してやるよ、このくらいの時代精神と気概が持てるかね。


沖縄辺野古移転への抵抗に加え、今の安保法制での抵抗の拡大をみても、日米関係の問題がより構造的なものになりつつある。欠陥オスプレイをあんなボッタクリで買わせていれば、普通の納税者なら屈辱感も蓄積するだろうが、それに象徴される構造的不満だ。


それを、どういう構造へ転換させてゆくのが最適解なのか、その道筋はどうつけるのか。安保反対を祭りに終わらせないためにも、知日派の裏表を見据えた上で、日本なりのシナリオをつくる必要があろう。


だいたい、「一流になりたいか。じぁあ、これだ」といわれて、へえこら隷従しつづけるような奴は、永遠に一流にはなれないんじゃないか。一流になるというのは、また、別の厳しい道だろう。


6月20日


私の素案は、一度、安保法案を違憲であるということで突っぱねて、安保同盟をつづけるなら、これまでのベトナム戦争をはじめに、イラク戦争にいたるまでの米国による戦争介入とそれによる「安全保障環境の変化」を、日本の平和憲法の理念から分析批判し、今後の米国の覇権を限局化していく方向性へ意見する


その上で、日米がどう世界に臨むのか、公文書として明確に示し、それにそった安保同盟を行ってゆく。イラク戦争突入によって地に堕ちた、国連安保理の立て直しを図っていく方向でまとめる。今回の動きは、世界からアメリカが「陰で」ブーイングされる中でおきているという認識を、持ってもいいと思う。



字義解釈に拘泥するのではなく、国連憲章平和憲法がなぜできたのか、その歴史的な意義や理念までさかのぼり、血肉化したうえで、平和憲法を日本にもたらした当のアメリカ、朝鮮戦争ベトナム戦争以降、狂暴化して止まらないアメリカを、そっちの方向に持って行く。「古き良き米国」に戻す。これは、覇権を収縮させていく方向に持って行くということである。日本の平和憲法の理念を生かしながら、中東や欧州から、少しづつ手を引くべきだろう。



そのくらいの歴史的使命って、日本にはないんかね。ただ、「一流になりたい」と尻尾についていくしか脳のない、ロボトミーされた国、そして、それさえも気づかない国になってしまったんだろうか。



2.日本会議の本質的な所について


6月15日 外国特派員協会 長谷部、小林、両教授会見
https://www.youtube.com/watch?v=1pcUEXsCcSc&feature=youtu.be
21分40秒から、小林先生が、日本会議の特質を語る。自民党に広く根を張り、「よくみると、明治憲法下でエスタブリッシュメントだった人の子孫が多い」と。やはり、そういうことか。


その本質を開陳され、会場でも苦笑が起きる。日本会議は、ある種の家に関する利権の復権を意図していると思ったが、やはりその通りだ。米国内のそういう勢力と連合しているんじゃなかろうかというのが、私の望見。公的な議会、学問、倫理というのを蹂躙しながら、拡張する力動もそこでやっと納得できる


以下、小林先生の発言を文字起こししておく
小林「日本会議は、私はたくさん知り合いがいるので、私が答えることになるんですが、日本会議の中の人に共通する思いは、第2次世界大戦で負けたことを、受け入れがたいだから、その前の日本に戻したい、彼らの憲法改正もそうですし、明治憲法と同じですし、それから、今回もそうですね、つまり、明治憲法下の世界軍事5大国、五つの大国の一つになって、アメリカと共に世界に進軍したいという、そういう思いを共有する人々が、集まっていて、かつそれは、あのー、自民党の中に広く根を張っていて、かつ、よくみると、明治憲法下でエスタブリッシュメントだった人の子孫が多い」 小林発言終了。外国特派員会見場に苦笑が漏れる。


安倍政権は、強烈な世襲内閣だし、おそらく官僚、放送にもその世襲が広がっている。その公的役割を得たDNA群が、一体をなして、日本会議国家神道という衣をまとい、明治を、戦前体制を、「再発」させているのだ。もちろん、巻き込まれる側も、同じDNAを継承しているから、同じような抵抗をする


ドイツは、ナチス幹部に関して、徹底的な排除を行った。死刑も行った。また、「闘う民主主義」という基本法理念をえて、徴兵制も一時期行い、そのネオナチズムという根を、空気の中から排除する免疫機構も獲得、実行していた。日本は、その点、なまぬるかったわけだ。ファシズム治療がたらなかったのだ


戦争にむかって拡張主義にいたる集団的な狂気みたいなものを、治療するのは難しい。予防が大事だ。昭和のころから、NHKで「戦争は2度としません」と放送していたが、戦前、戦時下の日本の愚かさを徹底検証批判せず、極めてなまぬるいと思っていたが、その通りだ。今は、NHKがそれに協力する。



日本会議カウンター記事紹介】
「人間天皇」とともに、新しい日本の歴史をつくろう
http://d.hatena.ne.jp/sarabande/20140907
ブルドーザーで安倍NOといったり、官邸前で、警察に囲まれながら叫んだりしても、このエスタブリッシュメントを養う、吸血鬼のような過去の遺物を退治できない。はっきりさせなければならないのは、国家神道は、昭和20年8月15日に、天皇人間宣言した、あるいは、させられたことで、崩壊しているという歴史である。この事実から、始めることが、むしろ日本にとって前に進む持続可能な道だと思っている


/人間天皇も「私」だが、象徴としての公的な私である


3.私有財産制による権力への意志、公的な学と法、天皇の権威と憲法


私有財産制を制限しない資本主義の最終的な形態として、「私」の資本による力と意志が、「公」による法や学、歴史の発展などの均衡にまさってゆき、それを破る段階が想定される。立憲主義が破壊されつつある中でも、娯楽番組全開な放送をみると、公の私物化の過程と考えれば、すんなり腑に落ちる。


放送も、私物化されてきているから、私に都合の悪い、学や法、歴史は、放送されなくなる。私のものだから、当たり前といえば当たり前だ。大河ドラマの登場人物も、日本会議幹部の名誉をたかめるようにいじられる。逆に、小沢もフセインも極悪人になる。こういうと身も蓋もなくなるが、戦後、反共軍産複合体の米日で共同して歴史的に進化してきている力というのは、こういうものではなかろうか。米国も大統領選候補者をみてもわかるように、民主党クリントン家、共和党はブッシュ家といった、資本制の下での古代的な王家のような政体が、透けて見えてきている。


そういう私的資本の圧倒的な力に、公の学や法が、むしろ、自らを歪曲しながら、近づいていくようになる。ネオリベラリズムネオコンサバティブや、リベラルホークというのも、そういう「権力の意志」に媚を売る政治経済的思想のようにみえる。今は、平和憲法が、「権力の意志」に媚を売って、3人の憲法学者により解釈され、NHKが大々的に拡大放送している。


これまでの自衛隊合憲の解釈と、今回の米軍や他軍との一体化を可能にする解釈とは次元がことなっている。日本国憲法とは、まったく別の思想や戦略、権力への意志によって動かされた軍隊、あるいは、その結果の紛争地帯への作戦に、一体化させられるわけだからだ。


おそらく、今回の海外派兵合憲の3人の学者の見解が、定見になってゆくと、「満州事変からの歴史を見直し」と訴える天皇の立場がなくなってゆくのではないか。そして、それを継ぐ、皇太子の立場もだ。他国が満州事変みたいな侵攻をした場合でも、ついていくか、あるいは、後始末にかかわることになる。


天皇の存在は、強く、現在の平和憲法につなぎとめられている。おそらく、どの憲法学者よりも、つよいだろう。人生自体が、その象徴そのものであるからだ。物言えぬ彼は、どうみているだろうか。日本会議の下衆な輩とは異なり、昭和天皇の苦杯を受け継ぎ、日本の指針を本気で考えている人であるはずだが


koto恵美(チャオ党一兵卒) ‏@em54672emi · 6月20日
@HSarabande 昭和天皇が開戦に反対し排斥運動が起きた様に皇太子殿下の排斥運動が起きるかもしれません。私は今上天皇支持者。ネトウヨの一部は今上天皇を左翼と評しています。保守の風上にもおけません。陛下は日本の背骨。陛下無ければ日本のアイデンティティが無くなり国家が溶解します


@em54672emi 私もその可能性を数年前から考えていましたが、先日の孫崎-岩上インタビューでは、最右翼?の雑誌には、すでにその話もでているらしいです。今回の「壊憲」は、敗戦を真摯に受け止めている天皇をすげ替えるぐらいのインパクトを、次の段階にもたらしかねないように思います。


だから、護憲派立憲主義派が、私みたいに、国宝級の「人間天皇」を、戦前の偏見でみずに、もっともっと支援して、盛り立てないといけないんじゃないかね。そこから、右や保守との連帯もできる。今、天皇に親和するのは、自民党でも、次世代の党でもなく、共産党の方ではないか。

そういう歴史的な進化とねじれのもたらした、戦前にはない突破口が、いまの日本にはある。歴史を否定しない日本人の姿を、人間天皇が示してくれているわけだ。そういう一点から、なにか、まとまりができんものだろうか。



矢部さんが天皇を取り上げたか。いい動きだ。

「水野木内みどり@kiuchi_midori
明仁天皇と美智子妃が願う「戦争をしない国」著者は矢部宏治さん。6月30日刊行“@yabekoji: @kiuchi_midori 本当にそうだと思います。」


木内みどりがレスポンスしたのも、まあ、悪くはない。都知事選の時は、細川、小泉を目の敵にして、まとまれなかったが、あそこまで一貫している天皇であれば、話は別だろう。敗戦を受け入れ、その後の平和憲法の理念を尊重する左右の幅広い枠が、象徴としての天皇を軸に、まとまれるんじゃなかろうか


天皇は、すでに現人神ではなく、我々と同じ人間であり、かつ日本人だ。おそらく、戦争責任から逃れずに贖罪をつづけている日本のエスタブリッシュメントである。そこから、日本人の世界における、新しい在り方を探っている。それを日本人がみずからのこととして引き受け、生かせないのか。



4.「安全保障上の環境の変化」への説明責任は、果たされているのか。自分の目で、曇りなく見つづけているか。


6月21日


日曜討論数分しかみなかったが、「安全保障上の環境変化」「日本が危機にさらされている」について、何故、それがもたらされたのか、どの国の外交的、軍事的行為によって起きたのか、どのようなドミノ倒しがおきているのか、そのもっとも重要な話がなされない。思考停止というか抑止されている。


米国の関連する中東や、日本の関連する極東に限って言えば、少なくとも、2000年ごろからの、網羅的な外交的、軍事的事象の調査研究が必要になると思うのだが、そんなことを、日本が、自民党であってもいいが、独立してやろうとする話は、頓と聞かない。それが認識できないと、安保も糞もない。


ウクライナ問題であれば、これは、日米と世界との整合性をとるためにも、象徴的には、MH17撃墜問題についての、日本の独立した調査や、見解を要する。これも、どちらかというとロシア側情報の方が整合性があるプロパガンダ合戦で、尻切れトンボになっている。この段階では、主体的な参加は困難だ


アメリカの助太刀しないと、どうしようもないというのなら、安保上の混乱の経緯、その原因、事実関係について、主権者である日本人に正確な情報を提供すべきである。「安全保障上の環境の変化」「中国とISで日本があぶない」だけでは、協力を求める日本に対して、子供だましにも程がある。


東京新聞:週のはじめに考える 「ブッシュの戦争」が落とす影:社説
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015062102000143.html
大義なき戦争」が、いかに一国の威信を損ない、人々の心情、日常に取り返しのつかない深い傷痕を残し得るか。あらためて思いを致す好機かもしれません。



日本会議アメリカ版みたいのがあって、それが戦後、世界をかきまわし、その反動で、にっちもさっちもいかなくなったから、同系統の日本会議が引っ張り出され、あるいは、出てきた。そういう構図ではなかろうか。安保法案反対というのは、実は、アメリカ的な「日本会議」の連中との戦いでもある


米国の、民主党共和党の中にも、こういう流れに抵抗している人々はいるだろう。日本と同じように。そういう人たちとのつながりというのも、日米同盟の健全化という意味でも、重要ではないかと思う。

「安保法制は阻止すべき。けれど、そこで終わらせてはいけない」 - 伊勢崎賢治
http://blogos.com/outline/117913/
「そもそも、ホルムズ海峡に地雷を撒くとしたらイランしかないでしょうが、グローバルテロリズムという地球規模(安保理五大大国にとって共通の脅威)の問題がある今、特に「イスラム国」の台頭により、イランはアメリカにとって「敵の敵は友」みたいな関係になっている」


「そして、アメリカとの間での核交渉も進んでいます。そもそも、政府、民衆とも根っからの親日国であるイランに、はなから「お前ら機雷まくだろ」と、アメリカでも言わないようなことを日本が言っている」
/2012年のレポートそのままの発言をしてる政治家が、日本の安保上の危機をつくりかねない。IS人質問題でもそうだったが、「安全保障上の環境変化」を安倍自身が誘発しかねない。


伊勢崎「親日国であるイランに、はなから「お前ら機雷まくだろ」と、アメリカでも言わないようなことを日本が言っているわけですから、これは中東情勢を全く理解していない外交音痴というだけでなく、あきらかに日本の国益アメリカ益(喜ぶのはアーミテージだけでしょう)も損なっています」



神浦 元彰 ‏@kamiura_jp · 6月21日
安倍首相が固持する「ホルムズ海峡の機雷封鎖」。イランの大学教授(国際問題)は「イランが日本など大事な輸出先に損害を与えることはない」。イスラエル国家安全保障研究所の主任研究員は、「イランが墓穴を掘る機雷封鎖はしない」と述べる。(朝日新聞 6月21日 朝刊)安倍首相だけが固持する。


@kamiura_jp @R_KitanoR  2012年のアーミテージ・ナイ レポートに書いてあって、機械のように繰り返すしか脳がないのでしょう。それが、「一流の国」になる道だと固持しているのだと思いますね。


「安保法制と関係諸国 誤解と不信を生まぬために」 石田淳:東大国際政治学 教授 http://www.asahi.com/articles/DA3S11818312.html
「その意図が、国会審議などによって国内でさえ明確にならなければ、関係諸国にとっては一層不可解なので、意図の誤認による武力紛争も生じかねない」


別に、日本が9条をかりに持っていなかったとしても、むしろ、国防軍を持ち、私が仮定するように、自分自身が駆り出され、最前線に行く必要がすでにある、例えば、3か月後に半年間の兵役がある、と仮定しよう。その場合、この無茶苦茶な首相の態度と国会審議をゆるせるかね?それで兵役に行き戦えるか


私ではない、金のない、正社員にも、派遣社員にもうまくなれないような、そういう若造が、海外にいって米国と血を流し、日本の威信を高めるのだ、大日本帝国だ、そういう考え、他人事が、一番まずいのだ。米国兵も、最前線はそんな他人事で運営され、大量に傷つけるとともに、傷ついている


だいたい、中央公論の『失敗の本質』最後のまとめだけでも読めば、周辺環境の変化に柔軟に対応できなかった硬直した軍の組織が、結局問題の原因だったと結論している。アーミテージ・ナイレポートを愚直に守り(私にもわからんでもないが、おそらく、一字一句でも反すると、アーミテージに殺される、国をつぶされるぐらいまで思い込んでいるのだろう。相手は、某国に「石器時代に戻す」とうそぶいた輩だ。だが、もし、官僚、自民党幹部がそれでは、すでに、属国以下の、アーミテージ鬼軍曹の囚人、奴隷である。日本軍の組織の実体もそんな形で硬直化していた)、周囲がみえない、みようとしない、というのも、そんな体質を体現している。逆に、特に、安倍のような知的基礎体力のないものは、「恐怖で見えなくさせられている」のかも知れないし、それすらも、気づかないのかもしれない。「自発的隷従」である。



日本や、日本人、日本の組織が一流になるというのは、別に戦争に強くなる目的でもなくていいのだが、この『失敗の本質』を、自らの問題としてひきうけ、日々の生活や、組織人としての役割のなかで、クレバーなミニ革命をおこしていくことであると私は思っている。アーミテージ・ナイレポートは参考程度でよかろう。相手に説明責任を求め、敬意をいだかれるぐらいの回答を、日本がしてゆけるかである。