「イスラム国」ではなく「TO-DIW-US」と呼称することから見える地平

 「イスラム国」と日本では通称されてしまっている、米国の虚偽の情報に基づいたイラク攻撃を因として、組織化された狂信的な国家的組織が、この1月の安倍首相のエジプトでの演説内容から、日本がみずからを壊滅させる有志連合に加わったと判断し、結果的に、捉えられていた2名の日本人人質を殺害する事件が起きた。この事件について、小沢氏は、2月3日の会見時に「この事件が起きたのは結局、安倍総理がわざわざ向こう(中東)まで行って、米国を中心とする有志国の一員として、イスラム国と戦う国々や人達に支援するということを声明発表し、その結果として起きた。集団的自衛権の事実上の行使というか、実行そのもの。」であると明言している。「イスラム国と戦う」という国に限って(安倍は明言している)、その目的を援助するために、人道支援という名目であっても資金援助を行うということは、実質、軍事目的の後方支援をしているものである。相手側には普通、そのように伝わるし、伝わった。実質的に集団的自衛権の行使を国際的に宣言してしまった、超「憲法」規的な所に、日本は宙吊りになっている。自分の失態を棚に上げた安倍のその後の、実質的な「報復」宣言も、この超「憲法」規的な所から出されており、憲法違反として論証しようと思えばできる発言だろう。


2015/02/03 邦人人質事件で生活・小沢代表、事件の本質が議論されていないと政府・メディア・各政党の姿勢を批判
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/230046



 ツイッターで発信していると、リアルタイムで起こることに対して、自分の考えを明確化して形にしようという動機づけがあり、一昨日来、この事件について、いろいろ考えることがあった。私なりのアウトプットは、一つは、これまでの英米から距離を置いた中東外交の歴史を踏まえた、日本独自でのイラク戦争の総括を行い、今後の、極めて困難な中東外交の礎とすることだと考える。ただし、米国からの激しい脅迫がある可能性がある。(これは、あたかも、ISILが、自分に協力しない部族の若者たちを皆殺しにするようにだが。)ここまで認識したうえで、しっかりと、米国が衰退した後の世界となっても、胸を張れるような中東関係についての日本の正々堂々とした礎を、今からでも作っておくのは、十分理にかなうことだと思う。「資本主義の終焉」を書いた水野和夫先生の長期的な胆の据わった視点から、行動を起こせる部分があるのではなかろうか。世界でもっとも多い人口をもつイスラム社会に根を持つ組織との理不尽な因を持つ「テロとの戦争」というレジームは、長期的には、どこかで崩壊するだろう。
 もう一つは、「イスラム国」の名称についてである。かの国の組織や思想について、2月2日NHKスペシャルで確認した限りでは、ちょうど、オウム真理教の組織や行動パターンににている。信心深い狂信的なものが、組織上部におり、不信心ものに対して自国内での容赦ないしめつけをするとともに、敵対する異教徒への殺害も辞さない。オウムで問題となった「ポア」、レベルの低い欲望にまみれたものは、修行させるよりも殺害した方が、相手のためである、そういった、現代社会の自然法的基盤である「人権尊重」を宗教的価値感が完全に放逐するような、そういう世界であり、社会である。こういうことからして、この組織体の名称を「イスラム国」とすることに、日本のイスラム教団体が反対の声明をはっきりとだしている。それは、オウム真理教をして「仏教国」といわれるのは、心外であるということと同じ感情であろうと思う。
 では、どういう名称にするか。英米自民党公認のISILも確かに「イスラム国」よりもいいだろうが、それでは、かの国が、何故生じたのか、米国の起こした、少なくとも当時当地ではイスラム国以上の残虐性をともたったイラク戦争とのつながりが、隠蔽されてしまう。また、日本国憲法の精神によれば、「戦争による外交問題の解決を放棄した」日本独自の中東への立場が、見えなくなり、報復の応酬となってゆくだろう。そこで、英米公認の「ISIL」ではなく、「米国による大義なきイラク戦争後の荒廃から生じた過激派組織」とするのが、侵略的思考や行動をいまもって戦後社会で行う米国とは異なる、日本独自の中東に対する独自外交を展開する礎になるのではないか。
 研究者からみても、この名称は的外れではないようである。新恭氏の2月5日発刊メルマガには、「『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』の著者、ロレッタ・ナポリオー二はこう言う。『冷戦期以後の代理戦争環境において、対テロ戦争の廃墟の中からイスラム国はその姿を現した』つまり、皮肉なことにイスラム国という疑似国家モンスターの生みの親は、対テロ戦争を仕掛けた米国やそれに追随した国々であるということだ」とあったが、この名称案は歴史的因果的本質をついたものであると思う。また、イラク、シリアなどの実情を取材しているフリージャーナリストの西谷文和氏発行の新聞をみると、この名称は、現場からみたイスラム国成立の経過からも、ぴったり当てはまると思われる。


イラクの子供を救う会ニュース」37号 西谷文和
p4〜p5 イスラム国 解説
http://www.nowiraq.com/files/iraqnews37.pdf



「米国による大義なきイラク戦争後の荒廃から生じた過激派組織」は、英訳すれば、
A terrorist organization that emarged from dilapidation after Iraqi War without the important meaning by the United States caused
となる。長すぎるので、「TO-DIW-US」(Terrorist Organization - Dilapidation Iraqi War - United States) と略してもいい。これは、人質として「イスラム国」に、いや「ISIL」に、いや、「TO-DIW-US」に結果的に殺害されてしまった、戦場ジャーナリストの後藤さんの遺志にも、外交問題の非武力的解決を国是とする、いまだ生きている日本国憲法の原則にも、かなう思考、態度ではないだろうか。
 たとえば、本日配信のロイターニュースを、この名称変換でみると、このようになる。




【ロイター】安倍首相が操縦士殺害非難、山谷氏はTO-DIW-USの「国内活動に関心」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0L800S20150204
2015年 02月 4日 10:05 JST

 2月4日、安倍晋三首相は衆議院予算委員会で、ヨルダン軍のパイロットがTO-DIW-USによって殺害されていたことについて、「言語道断であり、大きな憤りを覚える」と述べた。2日撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)


[東京 4日 ロイター] - 安倍晋三首相は4日午前の衆議院予算委員会で、ヨルダン軍のパイロットが「TO-DIW-US」によって殺害されていたことを強く非難し、テロに屈しない方針を改めて訴えた。山谷えり子国家公安委員長は、日本におけるTO-DIW-USの活動に「重大な関心」があると述べた。


安倍首相は、ヨルダン軍パイロット殺害に関する平沢勝栄委員(自民)の質問に対し、「言語道断であり、大きな憤りを覚える」と発言。「日本はヨルダンとともにある。ヨルダン政府、国民に心から連帯の意を表したい」と語った。さらに、「テロに屈しないというヨルダン国民の意思に敬意を表したい。日本もテロに屈することはない」と述べた。



<TO-DIW-USの日本での活動に「重大な関心」>

山谷えり子国家公安委員長は、テロ防止に向けた警察の対応を問われ、TO-DIW-USの「日本国内での活動実態に重大な関心を持ち、さまざまな手法で関連情報を収集、分析している」と述べた。その上で、「(TO-DIW-US)関係者と連絡を取っていると称する人や、ネット上で(TO-DIW-US)支持を表明している人がいることを承知している」と語った。

さらに山谷委員長は、人質救出に警察の特殊部隊を派遣する可能性について、警察権を海外で行使することは「否定されるものではないが、当該国の同意が必要」と述べた。その上で、特殊部隊はあくまで国内向けの治安部隊との認識を示した。

このほか岸田文雄外相は、殺害されたジャーナリストの後藤健二さんに対し、電話や面会を通じて渡航をやめるよう働きかけたことを明らかにした。岸田外相は「9月下旬、10月上旬に電話で、10月中旬には面会して、合計3回にわたって外務省担当部局から、危険な地域には渡航しないよう注意喚起をした」と語った。




以上引用終了。
 なにか、別の景色、地平が少しでも見えないだろうか。これは、ある種の米国発の「テロとの戦争」というトートロジーのような迷宮に入ってしまったということが見えてくるということであり、怒り猛る安倍的態度への距離感でもある。また、米国の作り出したテロ組織に日本が脅されるにいたったという、そういう冷酷なまでの因果連鎖の認識の持続でもある。イラク戦争に至る大量破壊兵器はなかったということは、世界的な認識となっている。
 そこから、始めることができるのか、それとも、厚顔で「侵略には嘘も方便」とするのか。イスラム国には、あるいは、失われた旧イラク国民には、もちろん、それは通じないし、日本の戦後立国の礎は、それを「取り戻す」のではなく、否定することであったはずである。それが、日本人の誇りでもあり、信頼でもあり、その上での世界的な経済的発展ではなかっただろうか?
 



以下、関連ツイート再録。

【文字起こし】後藤さん殺害事件で「あさイチ」柳澤キャスターの珠玉の1分間コメント 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20150202-00042730/
「戦争になったり、紛争が起きると弱い立場の人がそれに巻き込まれて、つらい思いをするということを、彼は一生懸命に伝えようとしていたんじゃないか。 」


柳澤キャスター「僕も後藤さんとはおつきあいがあったものですから、一番、いま、強く思っていることは、ニュースではテロ対策とか過激派対策とが声高に議論され始めているんだけど、ここで一番、僕らが考えなきゃいけないことというのは、後藤健二さんが一体、何を伝えようとしていたのか、ということ


@bilderberg54 今こそ、天皇陛下がおっしゃった「満州事変に学ぶ」べき時、そして、そこからアウトプットをすべき時なのでしょう。満州国総務庁次長岸信介の孫、安倍がやったのは、「イスラム国事変」のような臭いがします。後藤さんの遺志と安倍の発言は、真逆にかけ離れています。


普通、ある人が亡くなった時、どういう仕事をしていたのか、彼の気持ち、使命感がどういうものだったのか、その遺志をすこしでも継ごうとするものだと思うのだが、これが、「罪を償わせる」という安倍総理にはまったく感じられない。むしろ彼の遺志を踏みにじってはいないか。


後藤さんの遺志を継いで、イラク戦争の検証をしっかり日本はやる、命がけでやる、その理解の地点からできる独自の中東支援、中東外交あるいは、米国との関係づくりをやる、そうであれば、後藤さんの御霊も本当に報われるであろう。安倍の方向性は全く逆だ。

後藤さん個人の意志や個性といったものが、まったく排除されてしまっている。むしろ、それを、自分たちの政治的文脈、感情論で解釈して、彼の死を、彼の思いから切断して利用しているようにみえる。イスラム国に殺害された後、さらに、もう一度、彼の遺志をも亡きものとされてゆく。

この日本国内での故人への常識的な弔い感情からの、新聞論調、安倍声明の隔絶が、一種の政治的「事変」ではないかと考えさせられる。むしろ、後藤さんの死の通常の弔いからは、イラク戦争の総括を日本が独自にしなくてはならないという思いが出るだろうし、これは世界的にも正当化されるだろう。


@bilderberg54 @fwgd2173 事が拡大してゆく時には、不思議なほど、同じ轍にはまり込んで、厳密にステップを踏んでゆくもののようです。イスラム国も「石油」という点で「生命線」とみられているかもしれません。
中村大尉事件
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%9D%91%E5%A4%A7%E5%B0%89%E4%BA%8B%E4%BB%B6


【参考記事】惨殺された中村大尉〜満州事変への道
http://d.hatena.ne.jp/jjtaro_maru/20110917/1316261267
中村大尉事件を受けた朝日新聞社説 昭和6年8月18日
支那側に一点の容赦すべきところは無い。わが当局が断固として支那側暴虐の罪をたださんこと、これ吾人衷心(ちゅうしん)よりの心である」


後藤さん殺害を受けた安倍首相の談話も、この形式や、感情的な調子をとっている。
「『イスラム国』側に一点の容赦すべきところは無い。わが当局が断固として『イスラム国』暴虐の罪をたださんこと、これ吾人衷心(ちゅうしん)よりの心である」
恐ろしいほどにていないだろうか。


この新聞記事から約1か月後の昭和6年9月18日に柳条湖事件、つまり関東軍による自作自演テロが起き、満州事変に至る。満州事変に学ぶということは、これを学ぶことである。今後イスラム国の名で起こるテロが、果たして誰によるものか?天皇陛下は厳しいことを学べとおっしゃる。


@bilderberg54 @fwgd2173 昭和6年8月18日「支那側暴虐の罪をたださんこと、これ吾人衷心(ちゅうしん)よりの心である」と、今現在、安倍の言っているような話が朝日新聞で出てた丁度一か月後、自作自演テロともいえる柳条湖事件が起きています。繰り返さないで欲しいです


おそらく国民世論をもう一歩戦争状態に踏み込ませるためには、もう一つの大き目の事件がいるのだろう。これは、歴史からしか学べないような、ある種の、集団心理学的な法則みたいなものかもしれない。これをこの数か月間、警戒しても損はない。そして、それが誰の手によるものか、見極める目を持ちたい



小池共産党議員の質問にたいする安倍の答弁をきいた。イスラエルと密接な軍事的な支援関係に入りながら、パレスチナでも人道支援で称賛されているとする安倍の通りのよい言葉が空虚に響く。洗脳されている人との噛み合わない議論のようであった。もちろん小池がまとも。


イスラム国の理念ややり方を認めるつもりはないが、今回は事実として、安倍の薄っぺらい正義のヒーロー気取りの不用意な軽口演説で、日本人の生命と財産が危機にさらされてしまった。罪の意識も、後悔もないようだが、そうなると、これからも同じスパイラルがつづく。


共産党小池氏のまっとうな批判を、ISILに与するものだというような発言をしたようだが、基本的に「サヨク」「朝日新聞」と同じようなカテゴリーに、安倍の頭の中では、収まってゆくのだろう。


イスラム諸団体からISILへの公開書簡】
過激派組織ISILが本当のイスラームと違っている理由 http://blog.goo.ne.jp/from_syria/e/4c17a629c66f7255aa4481dcee917b74
7.イスラームでは、(訳注:例え敵であろうと)使者を殺す事を禁じている。ジャーナリストや援助団体の職員たちは使者と見なされるので、殺してはならない
22.イスラームでは、イスラーム共同体の合意(イジュマーウ)なくして、カリフを宣言してはならない
23.自分の祖国に属する事は、イスラームにおいて合法である


【名古屋モスク】「イスラム国」という名称の変更を希望します
http://nagoyamosque.com/3107.html
日本のメディアにおいて「イスラム国」と称されている過激派組織の行いは、イスラームの教えとはまったく異なるものです
/オウム国家(未遂)を「仏教国」とは言われたくないのと同じか


だから、「イスラム国のテロに屈しない」というのは、「米国による大義なきイラク戦争後の荒廃から生じた過激派組織のテロに屈しない」であり、「イスラム国に罪を償わせる」ということは、正確には、「米国による大義なきイラク戦争後の荒廃から生じた過激派組織に人質殺害の罪を償わせる」だ。


イスラム国」という名称は、確かに、非常に問題だろう。むしろ、イスラムへの日本人の偏見を助長させたい勢力に、利用される恐れがある。
「米国による大義なきイラク戦争後の荒廃から生じた過激派組織に、日本人人質殺害の罪を償わせる」こういちいち言えば、事の本質に近づいてゆく。


「米国発屑債権格付け詐欺ショック」が、「リーマンショック」と詐称され、事の本質が隠蔽されてしまうように、一律にイスラム過激派組織とされることで、事の本質、その原因、歴史が、抜け落ちてしまい、薄っぺらい正義感、懲罰行動に流されて、事態がさらに泥沼化してゆく。


イスラム国」「ISIL」という言葉を、ニュースで見聞きしたり、政治家が話したりしたときに、そこに「米国による大義なきイラク戦争後の荒廃から生じた過激派組織」を代入しなおして、その意味を考える、話し合う、そんな習慣が世界中に広がれば、なにか変ってくるであろう。


【英訳】A terrorist organization that emarged from dilapidation after Iraqi War without the important meaning by the United States caused
ISILではなく、TO-DIW-USと、国連で定義してゆけばいい。テロとの戦いを、これまでと違うやりかたでやってゆくために、言葉の定義を考え直すのがいいと思う。2003年当時国連事務総長だったアナン氏も、ISILを生んだ要因として、米国のイラク侵攻とその後の対応の要因が中心的であったと述べている。


アナン氏“US invasion of Iraq helped lead to the creation of the Islamic State (ISIS).”
https://www.ringoffireradio.com/2015/02/kofi-annan-americas-invasion-iraq-helped-create-isis/