夜明け前

 昨日、今日と、夜明け前から起き出して活動している。実験をしなくてはならないという仕方ない理由からではあったが、ここまで徹底して朝早く起きると、自然のリズムと同調してゆく無理のなさが体感される。
 夜の帳が開ける前の少し薄くなり始めた夜空、ところどころに灯のともるマンションの窓、車や人の音のほぼない静けさ、そして、朝の支度をしているうちに、かなりのスピードで帳が開けてきて曙となる。鳥たちの目覚めは、ぴったりと曙に同調しているようで、空が明るみ始めると、そこここから鳴き声がきこえだす。朝支度を終えて、アパートのドアを開けると、いつもとは違い、ひっそりとしつつも静かな生気を湛えたアパートの廊下と他の部屋のドアがある。仕事場に来ても、その静けさと朝の息づかいは、たっぷりと楽しめる。なんといってもまだ7時8分だ。これまで見たことのない鳥が窓辺に来ていたりする。
 朝型にするということが、面倒で苦痛のものではなくて、非常に気持ちのいいすがすがしいことであり、朝が来るのを楽しみにしてもいいという気持ちにさせてくれる。私の敬愛したショーペンハウアーは、朝の時間を味あわないことは、人生の楽しみを一つ失うことになるというようなことを述べていたが、それが、昨日、今日と実感できる。
 一日の始まりを楽しむ・・・・そんな余裕は、小学生の頃以来なかった気がする。だんだん、一日の始まりに無感覚になり、憂鬱になり、ぎりぎりに学校、職場にゆき、生活も後ろ向きになっていた。そんな生活とは、少し異なる色合いの生活が、朝、特に早朝の時間を手に入れることによって始まる気もする。眠くなればうまく昼寝を取り入れればいい。そう思えば、睡眠時間を失うという思いで、朝起きを躊躇することもなくなる。
 できるだけ、続けてみよう。夜明け前の起床。